第4回デジタルヘルス学会学術大会
大会テーマ「ニューノーマルの医療をハックせよ」
我々は医療の進歩によって、100年前とは比べ物にならない利益を享受しています。抗生剤は感染症死を激減させ、MRIや内視鏡は外科手術のあり方を変えました。そして、これまでの医療機関内での医療の進歩のみならず、医療機関の外、つまり人々の生活領域における医療の進歩も求められています。確かに、生活領域には医療者の手が届きにくいとされてきました。しかし、ひとりひとりの手のひらにコンピュータがある社会ではどうでしょうか?既に人類はスマートフォンと呼ばれる高性能計算機を手に持ち、地球全土でつながることができます。生活ではデジタルデバイスの恩恵を受けているのに、医療になるとデジタルデバイス恩恵を受けていない。このような医療における技術格差解消のためにはハックが必要です。
学会テーマにある「ハック(Hack)」は、元来悪い意味で使われるものではありません。ハックとは、事象に精通した人が最小の工夫で劇的な改善を施すことを意味します。例えば、旧石器時代の火起こしの方法、日清食品の安藤百福氏による即席麺がこれに当てはまります。デジタルヘルスにおいては、人による禁煙指導を毎日受けられない人にCureAppのようなアプリで禁煙治療をしたり、人による生活習慣改善指導を毎日受けられない人にPokémon GOやドラクエウォークで人々が歩きだしたり、といった事例がこれに当てはまります。このように、デジタルヘルスがもたらす医療のハックは、医療のフィールドが病院外に拡張できる可能性を示唆しています。第4回デジタルヘルス学会ではこのような視点で活動している研究者を中心に分科会を開催します。
そして、新型コロナウイルスがパラダイムシフト(社会の常識を変えること)を起こしました。1年前までは、熱発時でも会社に行かなければならないし、熱発時にレストランで食事をしてもいい、マスクをしていなくてもいい社会でした。ポストコロナの時代は非接触コミュニケーションが良しとされ、感染拡大防止のための健康管理が良しとされます。では、10年前の世界で新型コロナウイルスが発生していたらどうなっていたでしょうか?おそらく今よりもパニックになっていたことでしょう。私達は、計算機科学の進歩によって、過去のパンデミックとは異なる世界線に立つことができました。
第4回デジタルヘルス学会は、このような時代の変わり目に開催されます。ポストコロナを迎えるためのデジタルヘルスとはどのようなものか?医療者がデジタルヘルス人材になるには?医療者はデジタル社会とどう向き合ってくのか?これらの問いをもとに、ニューノーマルの医療をハックする研究者たちが発表し、議論します。
未踏の世界は、あなたの手の中に広がっています。
2020年10月18日
第4回デジタルヘルス学会学術大会
大会長 木野瀬友人